日本労働社会学会『通信』

vol.XIII, no. 7(2002年8月11日)

日本労働社会学会事務局

一橋大学社会学研究科    林大樹


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 学会通信2002年第7号をお送りします。
 事務局では現在、165名の会員(数名の入会予定者を含む)のアドレスを把握しており、これらの会員宛に本通信をメール送信しております。何か不都合がありましたら、事務局までご連絡下さい。
 本学会の年会費未納の会員に対して督促を行います。なお、今年会員になられた方 は、会費請求を行っていなかったこともあり、ほとんどの方が会費を入金されており ません。未納の会員と同様に督促状が届くことと思いますが、ご了解ください。


I. 第4回(2002年度)幹事会報告

  7月27日(土)午後0時30分より1時30分まで、早稲田大学人間総合研究センター(早稲田大学南門向かいのレストラン高田牧舎2階)にて開催。出席者は市原博、大黒聰、河西宏祐、鈴木玲、中村眞人、兵頭淳史、山田信行、吉田誠、渡辺雅男(敬称略)の9名であった。
 議題は以下の通り。
  1. 年報編集委員会
      山田委員長より、年報13号の編集作業の進行状況について報告がなされた。執筆予 定者の内1名の原稿が未着とのこと。
  2. 「労働社会学研究」編集委員会
      土田委員長が事前に欠席連絡のため、吉田委員から報告がなされた。
    1. 原稿申し込み締切(4月末日)までに8本の申し込みがあった。うち1本に関し ては原稿締切(6月末日)を2週間ほど過ぎてしまうという事前連絡があり、それは 認められない趣旨を伝えたところ、今回は辞退となった。
    2. 現在、投稿論文を査読中。
  3. 研究活動委員会
     渡辺委員長より、2002年大会シンポジウム企画(案)と自由論題申込者について報 告がなされ、議論の結果、次のようになった。
    1. テーマは「階層構造の変動と周辺労働の諸類型」としているが、さらに今後検討 を重ねていく。
    2. 基調報告者4名とコメンテータ4名の人選も終えている。報告が4本でコメン テータも付くことから時間配分について検討する。
    3. 学会員以外の方への謝礼について。入会予定者を除いて、東京在住者は1万円、 関西在住者は3万円を交通費補助として謝礼する。
    4. 自由論題の申し込み者は8名。内1名は締切を1日過ぎてからの報告申し込みで あったが、海外からの申し込みということであり、時差を考慮して受諾する。
  4. 会計
     大黒会計担当幹事より、2002年度予算に関する7月27日現在の会計報告、資産形態の報告、ジャーナル・カンパ・リストの報告、年報基金の報告、年報・ジャーナル 販売状況(2002年度)の報告がなされた。 (1)年報・ジャーナルに関して、購入者のほとんどが執筆者であり、その他の会員の 購入をお願いしたい、できるだけ学会を通して購入してほしいとのことであった。
  5. 大会関係
     北島大会幹事が欠席のため、代表幹事から順次状況について問い合わせることに なった。
  6. 会員異動
    1. 退会者―なし。
    2. 入会者−略。
      なお、他に1名の入会申し込みがあったが、書類の不備のため、本人にコンタクトを とり、次回の幹事会へ持ち越すことになった。
  7. その他
    1. 次期開催校について。
      自薦・他薦の受付をすることになった(大会初日の幹事会までに)。
    2. 大会報告案の検討(次回幹事会において)。
以上

II. 7月定例研究会報告

恒川真澄氏報告「高度技能形成と労働者の階層性――自動車産業A社事例――」の感 想                            

伊原亮司(一橋大学大学院)

 本報告は、自動車企業の間接部門の技能形成に着目するものであり、直接部門の労 働者の「熟練」とは異なる高度の技能が現場に存在していることを明らかにするもの である。自動車産業の技能形成にかんする従来の研究は、直接部門と準直接部門の労 働者に焦点を当てており、間接部門の労働者についてはほとんど取り扱ってこなかっ た。そこで、恒川氏は、工機・生産準備・試作などの間接部門における技能形成のあ り方をみていくことで、従来の議論を補完しようと試みる。
 調査対象は、国内シェア約4割、生産台数世界第3位の自動車企業(A社)であ り、調査方法は、技能教育・訓練に携わる人々からの聞き取り、および、資料収集に よるものである。
 氏は、高度の技能を形成している労働者層として、学園卒の技能者に注目する。教 育制度をみてみると、全労働者の「底上げ」を意図した「専門技能習得制度」が存在 するが、それ以外にも、高度技能者を育成するための制度が別途存在する。それが、 学園生や技能五輪の訓練生を育成するための制度である。学園生は、インテンシブな 専門教育を受けており、彼らの中から、技能五輪の訓練生が選ばれる。彼らは、職場 に配属後も、比較的良い待遇を受けている。技能労働者の中にも高度な技能を形成し たこのような労働者がいるのであり、同じ現場労働者の中にも階層が存在するのであ る。
 恒川氏の報告の後、フロアーから多くの質問が出された。1つに、直接部門との分 業関係にかんする質問である。例えば、直接部門から間接部門への異動はないのか。 それに対する氏の答えは、事実上、直接部門から間接部門への異動は困難であり、両 者の間には明確な分断線が引かれているということであった。2つ目に、学園卒の技 能員の配属先についての質問が出された。どの職場にどれくらいの比率で学園卒が配 属されているのか。この点については、今後の課題である。3つ目に、高度技能者と 労働市場との関係にかんする質問である。高い技能を形成している労働者は他の会社 へ移ることはないのか。報告者によると、他社ではそのような問題が浮上しているよ うだが、A社の場合には、今のところそのような問題は持ち上がっていない。その理 由の一つとして、労働者同士のインフォーマルな結びつきが強いため、他社へ移るこ とへの抑止力が強く働いているということが考えられる(同じ家族がA社に勤めてい るケースもあった)。むしろ、このような高度技能者は、自ら進んで長時間労働を引 き受けるなど、経営側に対して過度に同調している様子も伺える。これらの質問の他 に、女性労働者の技能形成の実態や間接部門の細かな内訳などについて、活発な議論 が繰り広げられた。
 氏の研究は、先行研究がほとんど扱ってこなかった間接部門に着目した点で、しか も、文書化された資料からだけでなく、労働者側から技能形成のあり方を捉えようと している点でオリジナリティがあり、大いに評価できるであろう。今後の課題として 言えば、全社的な技能管理の中でこの労働者層の教育・訓練を位置づけること、間接 部門の教育制度と直接部門のそれとの関係性を明らかにすることが求められる。

III. 次回幹事会および9月定例研究会のご案内

日時:9月28日(土)午後0時30分から幹事会。午後2時から定例研究会
場所:早稲田大学14号館803会議室
 なお、9月定例研究会の報告者の報告テーマ等、詳細については、決まりしだい、 ご案内します。多くの会員の皆様の参加をお待ちします。

VI. 関西労働社会学研究会のご案内

第2回「関西労働社会学研究会」が下記の要領で開催されます。
  日時:10月5日(土)午後1時−5時
場所:同志社大学今出川キャンパス内,至誠館3F会議室
報告者と報告テーマ: