日本労働社会学会『通信』

vol.XIII, no. 5(2002年6月)

日本労働社会学会事務局

一橋大学社会学研究科    林大樹


(学会ホームページ)http://www.jals.jp
(郵便振り込み口座番号)00150-1-85076
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「日本労働社会学会 大黒聰」
* ご注意! 銀行口座は2001年10月22日より変更しております。

 学会通信2002年第5号をお送りします。
 事務局では現在、164名の会員(数名の入会予定者を含む)のアドレスを把握しており、これらの会員宛に本通信をメール送信しております。何か不都合がありましたら、事務局までご連絡下さい。


I. 第3回(2002年度)幹事会報告

 5月18日(土)午後0時30分より2時まで、早稲田大学本部キャンパス14号館803会議室にて、2002年度第3回幹事会が開催された。出席者は11名(市原博、大黒聰、河西宏祐、鈴木玲、清山玲、土田俊幸、林大樹、兵頭淳史、吉田誠、山田信行、渡辺雅男)であった。
 議題は以下の通り。
  1. 年報編集委員会
     山田委員長より、年報13号の編集案と編集作業の進行状況についての報告。
  2. 「労働社会学研究」編集委員会
     土田委員長より、投稿論文を査読中である旨の報告。
  3. 研究活動委員会
     渡辺委員長より、2002年大会シンポジウム企画と人選についての進捗状況に関する報告。
  4. 会計
     大黒会計担当幹事より、2002年度予算に関する5月17日現在の会計報告。資産形態の報告。ジャーナル・カンパ・リストの報告。年報基金の報告。年報・ジャーナル販売状況(2002年度)の報告。2002年度予算に対する実績については、会費滞納分の徴収や年報等販売収入などで実績が上がり、学会の会計状況に改善の兆しが見られることが報告された。
  5. 大会関係
     以下の(1)第14回研究大会日程(案)と(2)スケジュール(案)を了承した。
    (1) 第14回研究大会日程(案)
    午前中 午後
    11月1日(金) 工場見学
    11月2日(土) 自由報告 幹事会 自由報告 懇親会
    11月3日(日) シンポ 総会 シンポ

    (2) スケジュール(案)
    自由報告申し込み締切:7月20日(土)(会員→渡辺研究活動委員長)
    第4回幹事会:7月27日(土)高田牧舎(早稲田大学南門向かいのレストラン)2階にて
    プログラム原稿締切:7月27日(土)(渡辺研究活動委員長→北島大会幹事)
    報告要旨締切:9月7日(土)(報告者会員→北島大会幹事)
    大会資料発送(プログラム等):9月24日(火)(北島大会幹事→会員)
    第5回幹事会:9月28日(土)早稲田大学14号館803会議室
    大会出欠返事締切:10月12日(土)(会員→北島大会幹事)
    選出幹事立候補受付期間:10月15日(火)〜10月26日(土)(会員→事務局:林)
  6. 事務局関係
    (1) 退会者―なし。
    (2) 入会者―略

II.秋の大会における自由論題報告の申込みについて

 秋の大会で自由論題報告を希望される方にお知らせいたします。報告ご希望の方はそのご意向を研究活動委員会までお知らせください。
申し込み先は、
一橋大学社会学研究科 渡辺雅男研究室
日本労働社会学会研究活動委員会
申し込み締め切りは、7月20日(土)(必着)
なお、報告要旨は、9月7日(土)までに、締切厳守で開催校(宇都宮大学・北島大会幹事)にお送りいただきます。

III. 5月定例研究会報告(パート1)

 5月18日開催の定例研究会では2本の報告が行われましたが、うち1本につき早速感想が寄せられましたので、掲載します。

鈴木誠氏報告『施設介護職の能力開発ー高齢者介護施設職員の大量観察調査を中心と してー』に対して                            

鎌田とし子

 今日、社会福祉の最前線は、大量に生み出されつつある高齢者の介護にあると考える者にとって、介護職の処遇の向上は喫緊の課題である。その基礎的作業の1つとして仕事のきつさを反映しない低賃金・劣悪な処遇をいかに評価し数量化するかが問われている。誰もが3K職場と考えてきた製造業・土木建設業ブルーカラーの労働は、いまやサービス業の中に拠点を移しつつある。サービス業は範囲も広く、店員から水商売に至るまで、労働の苛酷さには共通する面があるが、今回報告された介護福祉現場の労働は用便の始末を含む想像を超えるものがある。
 報告者鈴木誠氏は、一橋大学大学院で三菱電機を対象に人事制度の研究に従事してこられたが、林大樹氏らを含む共同研究プロジェクトの研究補助者(リサーチレジデント)として、福祉現場に入り、排便のおしめ替えまで体験して介護労働の熟練形成について考察された。
これまで福祉労働の特殊性を論じたり、福祉労働者の労働条件を実態調査した研究書はあったが、各単位作業の分析と熟練形成に焦点を当てた試みはなかった。
 いうまでもなく製造業ブルーカラーについては、職務分析・その難易度の数量化は広く行われてきたが、職場の主流となったホワイトカラーにさえまだ明確な尺度があるわけではない。ましてサービス業の場合は、熟練の客観化は容易ではないうえに、対人サービスとなると単位作業の難易度までは秤量できても、「対人」労働にまつわる精神的な要素も大きいだけに、手に負えない感じがしていた。しかし、このプロジェクトチームでは「マニュアル・スキル」と「コミュニケーション・スキル」に分け、今回は前者の分析に限って調査を実施した。
この調査は、全国13の特別養護老人ホームに勤務している介護施設職員450人を対象として実施された「高齢者介護施設職員調査」(2001年12月−2002年1月)である。そこでまず介護職員が利用者に行う介護サービスを、入浴・排泄・ベッドメイキング・食事・体位交換・更衣・トランスファー・清拭・洗髪・健康チェック・外出介助・通院介助・調理・掃除・衣料整理補修・買い物・薬の受け渡しといった、日常的な19の課業にひとまず分類したあと、難易度別に3段階(ほぼ出来る・確実に出来る・十分に出来るの3区分)の回答を用意して合計56の課業に細分化した。
 回答は介護者本人の自己評定であり、客観性に欠けるかもしれないが、合わせてここ半年間の経験の有無を聞いているのでおよその熟練度は推測できる。さらに450名の回答の平均得点を出し、各課業ごとの難易度の分布と経験年数・取得した資挌・賃金の相関をみて、介護能力を評定しようとした。予想されたとおり、資格取得を含めた経験年数との相関は高く、OJTの存在がうかがわれる。
 この研究は対人関係を重要な要素として含む「コミュニケーション・スキル」についての測定がまだ終わっていないので、いわば経過報告である。しかしほとんど手がつけられなかった対人サービス分野の一角に切り込むという新しい試みになった。しかも労働社会学会の伝統である現場に降り立っての研究の成果であることに敬意を表したい。排便のおしめ換えにも熟練(漏らさない)があることを身をもって感じた若い研究者が、今後サービス業の分野でどのような労働の測定技術を開発してくれるか、期待を込めて見守りたい。

IV. 掲示板

(1)会員からの投稿を紹介します。

 このところ、大学では教養部の改組に続いて、独立法人化への動きが急速になり、ますます研究者のポストが少なくなっていきそうです。一方、文部省が大学院の定員を増やしたこともあって、就職待ちの会員が増えつつあります。それを憂れう会員の一人として次のことを提案します。
1,募集しているポストがあれば、学会事務局に伝えていただき、会報に掲載する。または、近い将来空きのできるポストがあれば、労働社会学会の会員を推挙していただく。
2,これからは、共通科目をもてる教員、2単位制を採るようになったため他にいくつかの科目がもてる教員が望まれます。この動きに対処するため、2つ以上の科目がもてる よう、日頃からウイングを拡げておく。
3,若い研究者が増えています。自己紹介・研究上の助言を得る良い機会なので、定例研究会には是非参加していただきたい。研究会後のコンパは、報告者は無料、無職者・院生は大幅割引なので、気楽に参加できる。
4,中高年会員は、校務その他で忙しいことは理解できるが、若手育成のためにもなるべく参加していただきたい。
      

以上老婆心まで 鎌田とし子


(2)会議の案内です。
本学会あてに、男女共同参画推進本部、内閣府主催の「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」が6月25日(火)に東京厚生年金会館(大ホール)にて開催されることを広報するよう、また、参加を呼びかけるよう依頼がありました。詳しくは、男女共同参画推進本部のホームページをご覧下さい。

V. 幹事会および7月定例研究会のご案内

日時:7月27日(土)午後0時30分から幹事会。午後2時から定例研究会
場所:高田牧舎(早稲田大学南門向かいのレストラン)2階

定例研究会では、恒川真澄会員(東京女子大学・院生)の報告が予定されています。また、当日は、秋の大会のシンポジウムに向けてのプレ企画として、久場嬉子氏(東京学芸大学)を招いての研究会も予定されています。渡辺雅男研究活動委員長のメッセージを次に紹介します。
「7月27日(土)の定例研究会に久場さんがご出席いただくこと、また、そこでは最近お書きになった論文「ジェンダーと『経済学批判』−フェミニスト経済学の展開と革新−」(竹中・久場監修『現代の経済・社会とジェンダー、第1巻 経済学とジェンダー』、明石書店、2002年、第1章)を種に自由な議論を交わしたいということで、ご了解をいただきました。テキストは渡辺のほうで用意しますが、参加希望者には事前にメールで送ることを考えています。」
なお、7月定例研究会の報告者の報告テーマ等、詳細については、決まりしだい、ご案内します。多数の会員の皆様の参加をお待ちします。