日本労働社会学会『通信』

vol.X, no.4(1999年9月)

日本労働社会学会事務局

(学会ホームページ)http://163.212.160.112/jals/
(郵便振り込み口座番号)00150-1-85076

 猛暑と豪雨の夏も過ぎ、残暑の中にも秋の気配を感じるようになりました。つかのまの夏休みも終わり、会員諸氏には教育・研究・業務にお忙しい日々を送られていることと思います。
 去る7月10日には幹事会と定例研究会が開かれました。前回に引き続いての、新進気鋭の若手研究者による報告と活発な討論の模様をお伝えします。
 そして、今号ではいよいよ、10月30・31日の第11回大会の詳細をお知らせいたします。大会に先立ち、10月2日には定例研究会も行われます。いずれにつきましても、どうぞ今から日程等ご調整の上、多くのご参加をいただけますようお願いいたします。 

I. 第4回定例研究会のお知らせ 

 第4回定例研究会は、非会員の森ます美(昭和女子大学)、逆井征子(兼松、ペイ・エクイティ研究会)の両氏に報告をお願いしました。ぜひご参加下さい。

報告:森ます美「賃金制度の転換とペイ・エクイティ(同一価値労働同一賃金)」
逆井征子「リストラのなかの商社女性の現状」
 日時:10月2日(土)14:00〜17:30
 会場:早稲田大学人間総合研究センター別室−高田牧舎2階

 

II. 第3回定例研究会報告

 報告:山下 充(早稲田大)
「技術者と現場技能者の分業:戦前期池貝鉄工所における組織合理化と企業内身分制」
 7月10日の研究会では、山下充会員の報告「技術者と現場技能者の分業:戦前期池貝鉄工所における組織合理化と企業内身分制」が行われた。報告は、先に『社会学評論』に発表された同名の論文をもとに、それを補足する形で行われた。内容は次のとおりである。
 報告は、日本の製造業の特徴とされる「技術者と現場労働者の『柔軟な分業関係』」(=両者の職務のオーバーラップ、両者の緊密な情報交換・協力関係)が、歴史的にどのように形成されてきたかを、戦前工作機械5大メーカーのひとつである池貝鉄工所の調査をもとに明らかにしようとするものである。
 具体的には、戦前の池貝鉄工所において、(1)現場の熟練工(特に上位の職階層)と設計技術者の間に、インフォーマルなコミュニケーションを通じた協調的な関係が存在しており、これが、生産技術に関する問題解決や設計技術者の技能形成に貢献していた(=柔軟な分業が行われていた)ことが明らかにされるとともに、(2)そうした状況を生み出したのは、当時の特殊な組織合理化の有り様(科学的管理と互換性生産の不充分な進展)と企業内身分制の在り方(職工差別が行われながらも熟練労働者の上位階層は職員扱いを受けていた)であったことが明らかにされた。そして最後に、今後の課題として、戦前期の「柔軟な分業」と今日的なそれとを結ぶ経路を明らかにするという問題が指摘された。
 なお、報告は、戦前期の池貝鉄工所従業員に対する慎重な聞き取り調査をもとにしている。戦後55年が経過しようとしている今、このような調査を行いうる条件は厳しくなるばかりである。そのような条件の中で、このような報告(調査)が行われたということについては、十分な評価が必要と思われる。         (大野 威:岡山大学)

 

III. 第11回大会の日程・内容と参加申し込みについて

 会場となる名古屋市立大学人文社会学部は発足4年目を迎える若い学部で、学部棟は昨年完成したばかりの新しい建物です。キャンパスは旧八高の跡地にあり、落ち着いた敷地です。会員の皆様のお越しをお待ちしています。
 なお、名古屋にはさまざまな産業遺産があります。例えば、名古屋駅に近い便利な場所にある「産業技術記念館」(月曜休館、電話052-551-6115)は、生産機械の動態展示などを行っており、紡織機械と自動車製造の技術を学ぶことが出来ます。時間に余裕がある方はこうした施設にも足をお運び下さい。(第11回大会事務局)

  1. 第11回大会・工場見学日程(大会仮プログラムは別紙)
    10月30日(土)
       13時     一般研究報告開始
       18時15分  懇親会(名市大生協)
    10月31日(日)
       10時     一般研究報告開始
       12時15分  昼食・総会
    昼食をとりながら総会を行います。お弁当を注文して下さい。
       13時30分  特別報告
       16時     終了
    11月1日(月)
       10時     工場見学(ソニー幸田)、昼過ぎ解散予定
  2. 大会・工場見学・懇親会・弁当の申し込みについて
    大会・工場見学・懇親会・弁当の申し込み票を同封しました。申し込みは同封の「 申し込み票」にて事務局まで、FAX、E-mail、郵送のどの方法でも結構です。大会参加者数の見通しを立てたいのでよろしくお願いいたします。
  3. 宿泊施設について
     宿泊は各自で手配願います。大会と同じ日に鈴鹿でのF1レースがある関係上、名 古屋駅・金山駅周辺の宿泊施設は混みあっており予約がとりにくい状態です。そこで 大会事務局として、「金山プラザホテル」のシングル40室を9月末まで確保いたしました。金山プラザホテルをご希望の方は、同封の申込用紙にて、「富士ツーリスト 」まで9月中にお申し込み下さい。
    金山プラザホテル
    名古屋市中区正木3-7-15  電話 052-331-6411
    金山駅より徒歩10分(名古屋スポーツガーデン前)
    (お申し込み・お問い合わせ)
    富士ツーリスト 052-261-4621 FAX : 052-251-6913
  4. 第11回大会の内容
    1)特別報告
     これまでの会報でお知らせしたように、今年度からシンポジウムは隔年に開くこと になりました。今年度の大会は、企画した特別報告を用意するとともに、一般研究報 告(自由報告)を大会全参加者に聞いてもらえるよう、分科会形式をとらず1会場で 行います。
     特別報告については、改訂均等法がこの四月から施行されたことにちなみ、男女雇 用機会均等に関連するテーマで学会会員から1名、現場の方から1名という構成で考 えてきました。名古屋の商社・岡谷鋼機の女性雇用差別裁判担当弁護士の渥美玲子( 金山総合法律事務所)さんと、会員の藤井治枝(東京農業大学)さんに引き受けてい ただくことができました。
     渥美弁護士は岡谷鋼機裁判を担当しているほか、愛知労働問題研究所女性労働部会 の中心メンバーとして活躍され、九四〜九六年の四年間にわたり「学生の就職実態ア ンケート」を行い女子学生の就職差別の実態を調査しています。報告では、岡谷鋼機 裁判の事例を中心にしてコース別管理をはじめとする女性雇用差別の現状と問題点を お話ししていただく予定です。なお、山下東彦学会会員のホームページ http://www.japan-net.ne.jp/~yamashit/にある「岡谷鋼機の女子賃金差別とたたか う藤沢真砂子さんのページ」が、岡谷鋼機裁判については参考になります。
     藤井治枝会員は昨年、渡辺俊氏との共編著『日本企業の働く女性たち』(ミネルヴ ァ書房)を出版され、また、九月には共編著『現代企業経営の女性労働』(ミネルヴ ァ書房)刊行予定とのことです。藤井会員には、今日における労務管理の変容との関 係で女性労働の問題について報告していただく予定です。

    2)一般研究報告(自由報告)
    一般研究報告希望者とタイトル(仮題のものもあり)は以下の通りです。今回の大会では、1会場ですべての一般研究報告を行います。また、一般研究報告の時間は 、質疑を含め1報告当たり45分を予定しています(なお、下記報告予定者のうちには、大会までに本学会に入会する予定の方もいます)。

    • 野原光(広島大学)「トヨタ『完結工程』とリフレクティブ・プロダクション (ボルボ・ウデヴァラ方式)」
    • 土田俊幸(長野大学)「自動車労働とポスト・フォーデズム論争−−実態調査 からみた批判的検討−−」
    • 牧野泰典(立命館大学産業社会学部非常勤講師)「海外企業・日系企業の小集 団活動について」
    • 石井まこと(大分大学経済学部)「若年労働者の雇用管理と労働条件・就労意 識・転職志向の変容―長野県若年労働者就労実態調査からの考察―」
    • 橋本哲史(武蔵大学大学院)「新規大学卒就職過程における職業選択理論につ いて」
    • 大重光太郎(Universitat Osnabruck)「ドイツにおける被用者利益代表シス テムの「管理された分権化」の制度的メカニズムと行為主体の論理 −電機産業の事業所レベルにおける事例研究」
    • 塚本一郎(佐賀大学経済学部)「介護サービス分野のワーカーズ・コープの日 英比較」
    • 福井祐介(九州大学大学院人間環境学研究科:社会学)「東京管理職ユニオン の活動の実際」
    • 中村広伸(一橋大学社会学研究科)「労働争議史研究におけるジェンダー視角 の導入―山本潔による労働争議史論の再考―」

      ☆なお、上記の一般研究報告予定者は、報告要旨を9月30日までに、ワープロでA4一枚(40字×50行以内)にまとめ、プリントアウトした用紙とフロッピーディスク(1.44MB、テキストファイル形式)にて、下記、藤田研究活動委員長宛お送り 下さい。また、大会当日用いるプリントなどは、当日各自でご用意下さい(70部程 度)。あらかじめ藤田まで郵送されても結構です。OHPなどを利用される報告予定 者がいましたら、準備してほしい機器を藤田まで報告要旨とあわせて連絡願います。
      送り先:藤田 栄史
      ☆なお、上記の手続きを済ませた報告予定者は、報告要旨を9月30日までに、ワープロでA41枚(40字×50行以内)にまとめ、プリントアウトした用紙とフロッピーディスク(1.44MB、テキストファイル形式)にて、同じく上記、藤田研究活動委員長宛 にお送り下さい。

    3)工場見学はソニー幸田に引き受けてもらうことができました。日程は11月1 日(月)午前10時から12時です。JR東海道線岡崎駅下車、岡崎駅からはタクシーに乗り合わせて工場へ行く予定です。ソニー幸田(従業員2600名、うち女性1300名 )は、ソニー・グループの中でビデオカメラ・ビデオ周辺機器の設計・製造などを担当しています。同社は、労働省が今年度から設けた(男女雇用機会)「均等推進企業表彰」で「女性少年室長賞表彰」を受けた36社のうちの1社です。また、組立ライン方式をとりやめ、一人で製品を最初から最後まで組み立てる「多能工スパイラルライン」という1人生産方式を早い時期に導入したことでも知られています。

 

IV. 会計よりのお願い

例年どおり、大会において年会費(2000年度会費)を徴収しておりますので、よろしくお願いいたします。また、学会財政厳しい折、長期滞納の会員の方に、再度会費納入のお願いと振り込み用紙を同封させていただきました。よろしくお願い申し上げます。

V. 研究会「職場の人権」発足文書の同封

熊沢誠会員からの依頼により、研究会の案内を同封させていただきました。ご了承下さい。 

VI. 幹事会記録

1999年7月10日(土)11:00より12:30まで、早稲田大学人間科学部・高田牧舎2階、人間総合研究センター別室において、第4回幹事会が開催されました。

 出席者(敬称略)は、田中直樹、青木章之介、秋元樹、大黒聰、大野威、河西宏祐、北島滋、土田俊幸、藤田栄史、山田信行、吉田誠、鷲谷徹、渡辺雅男、林千冬、藤井史朗(以上15名)。
報告・審議事項は以下のとおりです。

 

〈報告事項〉

  1. 「年報」編集委員会より
     秋元編集委員長より、『年報』第10号の準備状況について、10号記念としてこの10 年間の大会レヴューを行うこと、投稿論文がなく研究ノートが一本であること、書評 が現在7本になること、また依頼原稿の集まり具合などについて報告された。
     年報の校正を2回やる必要性について疑問が出され、出版社の意向である旨確認さ れた。
  2. 会計報告
     大黒会計担当幹事より、7月9日現在の会計状況について、'99年度の会費収入が 、当初予算を上回る100.8%、滞納分の納入率(3年以上18人、うち5年以上6人)が 85.6%、に上ったと報告された。また、年報の売上増に伴う郵送費の増加もあり通信 費支出が多いことが報告された。
     これに対し、長期滞納者への対応などについて議論され、分割払いの可能性も含め 、学会継続についての何らかの意思確認をすることが確認された。
  3. 代表幹事より
     田中代表幹事より、第18期日本学術会議登録申請について、5月19日に手続きし 、9月中旬に結果がでる旨報告された。

〈審議事項〉

  1. 会員の異動・新入会員について
     新入会者が6名、本年度一杯での退会希望者が1名ある旨報告され、了承された。
  2. 第11回大会について
     藤田研究活動委員長より、一般研究報告の申し込みが3名あること、工場見学先は まだ未定であること、特別報告については、雇用機会均等法関係で対応中である旨報 告された。また、次回10月の研究会について、2名と交渉中である旨報告された。
    これについて、10月研究会と大会との関係その他について意見が出された。
     田中代表幹事より、今年度大会準備の分担について提案があり、今年度は大会に先 立って報告要旨集を配布しておくこと、宿の手配はしないことなどが確認された。
  3. その他
     『通信』郵送時に、会員の著作のパンフを入れる件について、事務局の煩雑さを鑑 み有料にすることについての打診があった。
     これに対し、この制度は'95年からのものであり試行して問題があれば検討するこ とになっていた旨が再確認された。また全面的に自分で郵送する場合には多額の費用 がかかるのだから、有料にするのが当然だとの意見が出され、次回幹事会で対応を決 めることとした。
     田中代表幹事より、12月頃に会員の著作についての合評会を開催し、同時に幹事会 を開催する旨問題提起があった。

 

VII. 会員の移動

1.新入会

 

2.住所変更

3.メールアドレス変更(訂正)

 

第4回定例研究会のお知らせ

報告:森ますみ「賃金制度の転換とペイ・エクイティ(同一価値労働同一賃金)」
   逆井征子「リストラのなかの商社女性の現状」

日時:10月2日(土)14:00〜17:30

 会場:早稲田大学高田牧舎2階人間総合研究センター別室−高田牧舎2階
(早大南門前、裏面地図参照)

 ※定例により、研究会の前に第5回幹事会を開きます。幹事の皆様は以下のとおりお集まり下さい。

日時:10月2日(土)11:00〜14:00
会場:早稲田大学人間総合研究センター別室−高田牧舎2階
(早大南門前、地図参照)