日本労働社会学会『通信』

vol.IX, no. 4(1998年9月)

日本労働社会学会事務局

静岡大学情報学部社会学研究室(藤井史朗)

(学会ホームページ)http://www.jals.jp

 暑い夏の盛りをやっと過ぎたところですが、まだまだ厳しい残暑です。皆様お身体に変わりはございませんか。
 さる7月11日には、ノース・スコット氏(カリフォルニア大学)に、研究報告をいただきました。この模様を報告いたします。
 本学会もプレシンポジウム、大会をひかえ、最も活動的なシーズンを迎えました。会員の皆様にはいろいろとお知らせやお願いがございます。『労働社会学研究』(通称「学会ジャーナル」)の発行のお知らせとカンパのお願い、大会参加申し込み、次期「選出幹事」候補者ご推薦のお願い、名簿作成に向けてのアンケートのお願い(変更のある方のみ)などです。よろしくご検討の上、必要に応じて回答をお願いいたします。
 また、たびたびのお願いで恐縮ではありますが、学会財政逼迫の折、会費未納・滞納の方には請求書を同封させていただきました。どうかよろしくお願いいたします。

I. 第3回研究会報告

  ―スコット・ノース氏「日本における父親の仕事と家庭の両立問題」
            「最近の米国における労働研究ハイライト」―

ウィスコンシン大学  鈴木 玲

 第3回研究会は、7月11日約15名の参加をもって行われました。スコット・ノース氏(カリフォルニア大学バークレイ校社会学部博士課程・富山大学人文学部客員研究員)が、「1990年代の日本における父親の仕事と家庭の両立問題」と「最近の米国における労働社会学の動向」について報告をしました。最初の報告は、博士論文のプロジェクトとして彼が現在富山で行っている「父親の仕事と家庭の両立問題」調査についてでした。ノース氏の問題意識は、グローバラリゼーションなどの最近の資本主義の変容が父親の家庭でのあり方にどのような影響を及ぼしているのかということです。先行研究では、男性の仕事と家庭のバランスを決定する主な要因として、仕事内容、ジェンダー規範、個人の選択能力などが取り上げられていますが、彼によるとこれらのアプローチは社会的相互作用で生まれる「解釈」を分析枠組みに含めていないという共通の問題点を持っています。日本人男性がどのような父親像を持っているのか―すなわち父親の役割をどのように「解釈」しているのか―を調べるため、ノース氏は富山在住の20組の共働き夫婦およびジェンダー別のフォーカス・グループを対象に面接調査を行いました。彼は、父親像を会社との関係(自立―依存)と父親の理念型(「自分らしさ」―「大黒柱」への志向)という二つの軸で整理して、5つのタイプの父親像を抽出しました。質疑応答では、参加者から面接調査の方法論や理論的問題などについてのコメントが出されました。次にノース氏は、アメリカの労働社会学(Sociology of Labor and Work)についての最近の動向について報告しました。彼は、この50年の間、労働社会学の分析焦点が生産点(マイクロ)から構造(マクロ)に転換したこと、最近の研究は構造分析に労働者を再び「取り戻して入れる」分析視角を取るようになったことを指摘しました。最近の研究の例として、ロバート・トーマスのアルミ、飛行機、自動車、コンピュータ産業の新技術導入をめぐる「社内政治」の分析を紹介しました。また、スコット氏は現在のアメリカ労働社会学で最も重要なのはフレキシビリティの問題であると指摘しました。なお、後日ノース氏から連絡があり、「労働社会学会の皆様が、このような発表の機会を与えてくださったことに非常に感謝している」旨を伝えてほしいとのことでした。

II.『労働社会学研究』(通称「学会ジャーナル」)の発行とカンパのお願い

 河西宏祐幹事を委員長とする『労働社会学研究』編集委員会は、とりわけ若手研究者に重厚な実態調査研究発表の機会を拡大すべく、新しい実態調査研究誌『労働社会学研究』の発刊を準備してきましたが、ここに学会創立10周年を記念して第1号を発行する運びとなりました。準備に関わってこられた方、投稿された方のご努力を祝したいと思います。新研究誌の主旨につきましては、「『労働社会学研究』発行趣意書」を同封しましたのでご覧ください。
 他方、本学会は現在、財政的にかなり厳しい状況にあることも事実です。そこで創刊に当たり、『労働社会学研究』発刊カンパを会員の皆様に要請することに致しました。「『労働社会学研究』カンパ要請書」および、振込用紙を同封いたしましたので、この点につきましてもよろしくお願い申しあげます。

III.第10回大会シンポジウム・自由報告企画・工場見学と参加申し込みについて

  1. 第10回大会・工場見学日程
     11月1日(日)
       15時 幹事会および大会準備 
    工場見学をする会員は「ホテルブケ東海」(浜松駅南口3分、シングル 6,400円)宿泊可
 11月2日(月)8時30分 工場見学、「ホテルブケ東海」前出発(貸し切りバス)

9時15分 鈴木自動車湖西工場着−工場見学−

   11時15分 湖西工場出発
   12時    静岡大学浜松キャンパス佐鳴会館着
           昼食(静大生協利用可)
   13時30分 一般研究報告開始(静岡大学浜松キャンバス「佐鳴会館」)
   17時30分 総会

18時30分 懇親会(「佐鳴会館」内)

           「ホテルブケ東海」宿泊可

11月3日(火−文化の日)

9時30分 シンポジウム報告開始

   12時30分 昼食・休憩
           当日生協閉店のため、お弁当(1,000円)注文可
   13時30分 シンポジウム再開−討論
   16時    終了

  1. 宿泊施設について
     11月1日(日)、11月2日(火)に、浜松駅南口3分(浜松駅よりバスで静岡大学会場まで18分)のところにある「ホテルブケ東海」(〒430 浜松市砂山町353-7、TEL:053-456-8111、シングル一泊6,400円)の予約が可能です。特に工場見学参加希望の方は、ホテル前より貸し切りバスで出発いたしますので、11月1日のご宿泊をお勧めします。申し込みは、以下の申し込み票にてお願いいたします。
  2. 大会・工場見学参加、宿泊、弁当などの申し込みについて
     大会・工場見学・宿泊・懇親会・弁当(11/3昼食)などの申し込み票を同封しました。申し込みは、同封の「第10回 日本労働社会学会大会 申し込み票」にて、事務局まで、FAX、郵送等にてお願いします。e−mailでも結構です。
  3. 第10回大会シンポジウム企画
    来る大会シンポジウムの内容は、すでに一部お知らせしましたが、次のような形で企画しております。
     タイトル:「国境をこえる労働社会」
    趣旨:
     過去2年の大会で日本的経営の現時の変化、その変化にたいする労働組合の対応と将来の可能性を議論してきた。しかしながら、われわれは日本の経営、日本の労働組合の変化、対応、将来にのみ、もっぱら目を向け、分析し議論をしてきたのではないか。いうまでもなくこの国内の変化は、1985年のプラザ合意による円高の定着に対応し、日本の企業がより本格的な多国籍化を開始したグローバルな展開のなかで生じている。そのなかで日本経済は世界の各地にさまざまな影響を与えている。日本の経営、労働組合、労働のありよう、法体系の特徴や変化が他国に大きな影響を与え、ひいてはこの影響は各国の労働者の上に直接及ぶ。この影響についてわれわれは、日本的経営の移転、適用・適応などの問題を除き、ほとんど正面から取り上げてこなかった。
     国籍をもった視点ではなく、国境をこえた外側からの視点でこの間の変化をみたらなにが見えてくるだろうか。この大会では、他国の労働者が、日本の経営、労働運動、働きよう、法体系の変化によりどのような影響を受けてきたかを明らかにしたい。それにより、われわれの研究を将来よりグローバルなものへと展開する一歩としたい。その方法論の模索とともに(文責 京谷栄二研究活動委員長)。
    シンポジスト:
    • 山田信行会員(帝京大学) 国際的視点からの労使関係研究
    • 塩沢美代子氏(アジア女性労働者交流センター) 日本の企業経営の変化や労働法の規制緩和がアジアの労働者へ及ぼす影響
    • アンジェロ・イシ氏(武蔵大学) 日本の外国人雇用が南米の労働者とコミュニティに及ぼす影響
    • テリエ・グローニング会員(オスロ大学) 日本的経営の北米への移転にともなう労働者の変化、ヨーロッパでの議論もふまえて
    • 秋本樹会員(日本女子大学) コーディネーター
  4. 大会自由報告について
     自由報告希望者とタイトルは以下のとおりです。報告者多数のため、大会では、2会場に分けて開催いたします。
    • 土田俊幸(長野大学)
      「イギリス産業社会学におけるジャパナイゼーションをめぐって」
    • 大槻奈己(上智大学大学院)
      「性別職務分離の形成−総合職システムエンジニアの事例から」
    • 榎本環(早稲田大学大学院)
      「現代日本の大企業ホワイトカラーの労働エートス―都市銀行員へのアンケート結果から―」
    • 鈴木玲(ウィスコンシン大学大学院)
      「労働組合政治研究のフロンティアーー地域対立とジェンダー」(仮題)
    • 橋本哲史(武蔵大学大学院)
      「就職過程における個人の職業的アイデンティティの形成と「職業希望モデル
      」の機能」
    • 久津美 香奈子(大阪外国語大学大学院)
      「フィリピンにおける韓国系進出企業の事例研究」(仮題)
    • 金子満活(関東学院大学大学院)
      「建設産業における下請問題:野丁場の現状とこれから」
    • 大野正和(大阪市立大学大学院)
      「仕事と人間関係の心理」
    • ユン シュクション(大阪経済法科大学アジア研究所客員研究員)
      「韓国における経営編成原理と文化:日本における集団主義論の比較をかねて」
    • 前谷典弘(専修大学大学院)・井出久章(労働調査協議会)
      「自動車産業の新展開による地域産業構造の変動と地域社会へのインパクト:豊橋・東三河地域」
    • 駒川智子(一橋大学大学院)
      「銀行における『女性活用』と性別職務分離」
 (上記報告予定者のうちには、大会までに本学会に入会する予定の方もおります。)

 ☆なお上記の自由報告予定者は、報告要旨を9月30日までに、ワープロでA4一枚(40字×50行以内)にまとめ、プリントアウトした用紙とフロッピーディスク(1.44MB、テキストファイル形式)にて、下記、京谷研究活動委員長宛にお送り下さい。また、大会当日用いるプリントなどは、当日各自でご用意ください(35部程度)。あらかじめ事務局宛(浜松市城北3−5−1 静岡大学情報学部社会学研究室(藤井史朗))に郵送されても結構です。

京谷 栄二

IV.1998年度大会プレシンポジウムのお知らせ

 次回の第4回研究会は、プレシンポジウムとして、10月3日(土)14:00より、日本大学会館・本部(市ヶ谷)203号室にて開催いたします。
 報告予定者は下記のとおりです。

V.次期選出幹事「立候補者」(自薦・他薦)の届け出のお願い

すでにご承知かと思いますが、来る11月2日(月)に予定されている総会におきまして、次期選出幹事を選出いたします。昨年総会決定により、選出幹事の数は10名(選任幹事は9名)です。
 「日本労働社会学会役員選出に関する細則」(1997年度総会で制定承認、1998年10月1日より施行)の第3条には、「選出幹事の立候補者は、総会前に幹事会に届け出るものとする。2 立候補者は、自薦及び他薦とし、他薦の場合はあらかじめ本人の承諾を得るものとする。3 被選挙権は、選挙時までに会費を完納した会員が有するものとする」となっております。この立候補者に対する総会での投票(3名以内連記、上位10名当選)で選出されます。
 この原則において次期総会で選出幹事を選出いたしますので、同封した「次期選出幹事『立候補者』(自薦・他薦)の届け出のお願い」にて、立候補者の届け出をお願いいたします。しかし、立候補者が総会までに定員に満たない場合も想定し、幹事会としても対応しておく必要があると考えております。そのため、第一次の届け出期間として、9月30日までに本用紙にてFAX、郵送等(e-mailも可)で事務局まで「立候補者」名(自薦・他薦、他薦の場合は本人の承諾を得て下さい)を届け出て下さい。その数を考慮して、幹事会の方でも総会までに立候補者が最小でも10名揃うように対処したいと思っております(ただし、9月30日に間に合わない場合でも、総会まで届け出の権利はあります)。
 上記のことをご了承の上、事務局までお届け下さい。

VI.名簿作成のためのアンケートについて

 本年度大会に向けて、新名簿を作成しております。昨年夏にも移動などのアンケートを行い、昨年大会参加者には仮名簿をお渡ししましたが、なお不備な点が多々あります。そこで、新名簿の充実のため、会員の皆様に、住所、所属機関などの移動、誤り、不足などについて再度確認のアンケート用紙(「労働社会学会名簿作成用リスト」)を同封いたしました。この記載内容に、誤り、変更、不備などがございましたら、修正の上、FAXにて送り返してください。郵送、e−mailでも結構です。期限は、9月30日と致します。修正する必要がない場合は、必要ありません。
お忙しい中恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。

VII.日本労働社会学会第4回幹事会議事録

(出席者)鎌田哲宏、秋元樹、京谷栄二、坂幸夫、田中直樹、吉田誠、鷲谷徹、藤井
史朗、山下充(オブザーバー)

(報告事項)
  1. 「年報」編集委員会
    田中編集委員長より、第9号の出版について、特集原稿の集まり具合で大会まで出るか微妙であること、8月末に原稿を入れる予定であること、郵送費は「ジャーナル」と合わせ節約をはかる旨報告された。
  2. 「労働社会学研究」編集委員会
    吉田学会ジャーナル編集委員より、投稿・査読状況について報告された。また、予算について、カンパ30万円(今年度のみ)、学会からの援助20万円、執筆者買い取り7万円、会費値上げ(要請)26万円、売り上げ15万円などの収入計画が示された。
  3. 会計
    坂会計担当幹事より、7月11日収支状況について報告された。また、次回『通信』郵送時に、趣意書と振込用紙を同封すること、再度会費納入依頼書を同封すること、また次期総会時に会費値上げを提起するなどの提案があった。
  4. 研究活動委員会
    京谷研究活動委員長より、大会報告について日本社会学会のニュースに載せるよう試みる旨報告された。また、シンポジウムの具体的準備、謝礼のあり方などについて議論した。
  5. 事務局
    大会事務局として、岩本氏、笹原氏に依頼することが確認された。
  6. その他
    鎌田代表幹事より、会則変更、運営に関する細則変更(「労働社会学研究」の運営)などの準備をする旨報告された。

VIII.会員の移動について

  1. 新入会員
  2. 退会

※そのほかに、入会希望者が数名おります。10月の幹事会で承認される予定です。


1998年大会プレシンポジウム

 報告者

  • 山田信行会員(帝京大学)
  • 塩沢美代子氏(アジア女性労働者交流センター)
  • アンジェロ・イシ氏(武蔵大学)
  • テリエ・グローニング会員(オスロ大学)
  • 秋本樹会員(日本女子大学)

日 時:10月3日(土)14:00〜17:00

場 所:日本大学会館・本部、会議室(203室)地図参照
    (JR、地下鉄「市ヶ谷」駅下車 徒歩5分)

※定例により、研究会の前に第5回幹事会を開きます。幹事の方は下記の通りお集まり下さい。
  日時:10月3日(土)11:00〜14:00
会場:上記、日本大学会館・本部、会議室(203室)