日本労働社会学会『通信』
vol.IX, no. 3(1998年6月)
日本労働社会学会事務局
静岡大学情報学部社会学研究室(藤井史朗)
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本州は梅雨空のはっきりしない季節が続いております。夏休みも近づいてきましたが、皆様お忙しい日々をお過ごしのことと思います。
さて、遅れてしまいましたが、『通信』第3号をお送りいたします。すでに何名かの方からは、e-mailによる連絡でよいとの通知を受けておりますが、今回は、会計からのお願いと会費請求書の同封もありますので、全会員に郵送いたしました。11/2〜3の大会での研究報告の受付も致しますので、中身にご注意下さい。
I. 第2回研究会報告
5月9日に、八木正先生(広島国際大学)をお招きして「戦後労働調査を語る」第6回が、約20名の参加をもって行われました。「労働社会学と職業社会学とのはざまで」と題された発表の前半では、幼少時代の「職人さん」体験、階級問題への接近およびその実証研究、シモーヌ・ヴェイユを通した学問的スタンスの転換などを通して先生の「職業労働社会学」のモチーフについてお話しになられました。また後半では、北陸・沖縄の出稼ぎ労働、職業差別・被差別部落問題、寄せ場問題、食肉産業など先生の多岐にわたる実証研究の足取りを振り返っていただきました。コメンテーターとして辻勝次会員(立命館大学)、藤井史朗会員(静岡大学)が立たれ、それぞれの立場から八木先生の研究課題、方法、概念について報告されました。
質疑応答では、個々の実証研究についての質問に加えて、先生の研究方法、特に1987年に発表された「実践的課題と社会学の自己変革」で提起された「主体と客体との同化をとしての現場学習」をめぐって熱心な質疑応答が行われました。いかに調査対象と関わりあうかという研究者のスタンスを問うこの問題は、「大学紛争」を教師として経験した研究者の、真摯な姿として映りました。研究会参加者の一人として、ともすれば手段主義的に調査対象者と接してきた自己の研究態度というものを反省させられた次第です。
なお、この「戦後労働調査を語る」は、今年度の『年報』に掲載されることになっております。詳しくは、こちらの方をご覧ください。
(横浜市立大学 吉田 誠)
II. 次回研究会のお知らせ
次の第3回研究会は、7月14日(土)14:00より、日本大学会館・本部(市ヶ谷)203号室にて開催いたします。報告者はノース・スコット氏(カリフォルニア大学バークレー校大学院博士課程・現在富山大学客員研究員)で、報告題名は「今の日本における父親の仕事と家庭の両立問題」及び「最近の米国における労働研究ハイライト」です。多数の会員のご参加をお待ちしております。
III. 大会準備について
大会及び大会に向けての今後の日程は次のとおりです。
- プレシンポジウム
10月3日(土)14:00より、日本大学会館・本部にて。
- 第10回大会
日 時:1998年、11月2日(月)・3日(火−文化の日)
日 程:11月2日(月)午前中に工場見学(湖西市、鈴木自動車)
午後から一般研究報告、総会、懇親会。
11月3日(火)シンポジウム(午後4時終了予定)
(ただし、11月1日(日)午後より幹事会を開きます。)
会 場:静岡大学浜松キャンパス、佐鳴会館(大ホール200席、懇親会会場)
工場見学者はホテル指定
―ホテル「ブケ東海」(浜松駅南口3分、シングル6,400円)
◎来る日本労働社会学会大会の一般研究報告の申し込みを受け付けております。本年度大会は2日制で行いますので、時間にゆとりがあります。どんどんご応募下さい。一人あたりの報告時間は30分(質疑応答+10分)を予定しております。
☆一般研究報告申し込み期限は、7月27日(月)です。報告題名のみ、京谷研究活動委員長宛に郵送、FAX、e-mailなどでお申し込み下さい。宛先は下記のとおりです。
京谷 栄二
☆なお上記の手続きを済ませた報告予定者は、報告要旨を9月30日までに、ワープロでA4一枚(40字×50行以内)にまとめ、プリントアウトした用紙とフロッピーディスク(1.44MB、テキストファイル形式)にて、同じく上記、京谷研究活動委員長宛にお送り下さい。
○シンポジウムについては、これまでの経過を踏まえて、研究委員会・幹事会で準備を進めておりますが、ご意見・要望のある方は、至急上記研究活動委員長宛にお寄せ下さい。
IV. 名簿の作成について
本年度大会に向けて、名簿を作成いたします。すでに昨年の大会で、参加者には仮名簿をお渡ししておりますが、その後の移動などについて調べたいと思います。
- まず、これまでの名簿からの変更がある会員は、事務局までe-mail、FAXなどでお知らせ下さい(7月末日まで)。
- 1の知らせがなく、かつe-mailを用いている会員には、事務局よりe-mailで問い合わせます(8〜9月上旬予定)。変更がある場合には折り返し、e-mailにてお知らせ下さい。
- 1の知らせがなく、かつe-mailのない会員には、次の『通信』郵送時(9月中・下旬予定)に、返信用FAX用紙を同封いたします。変更がある場合には、それを用いてFAXもしくは郵送にてご連絡下さい。
- 上記作業は、9月末日までに終了する予定です。よろしくご協力下さい。なお、他の会員の移動その他についてお知りの方は、それもお知らせ下さい。
V. 運営体制の一部変更についてのアンケート集計結果
先の『通信』にて、学会「運営体制の一部変更についてのアンケート」を実施いたしました。質問文及び回答集計結果は以下のとおりです。
「あなたは、学会役員(代表幹事1名、幹事若干名、監事(監査)2名)の任期を、連続2期4年以内(連続する場合は2期4年以内で、1期空ければまた再選され得る)とする案に賛成ですか、反対ですか。番号に○を付けてください。またよろしければその理由もお書きください。」
- 単純集計(1998.5.12現在)
- 賛成 →22( 81.5%)(ただし、メールにおける「賛成」もしくは「条件付き賛成」も含まれる。)
- 反対 → 1( 3.7%)
- その他 → 4( 14.8%)
計 27(100.0%)
- その理由
- 賛成
- 一般論として賛成です。ただしこの制度を実行するのは、経過措置として新制度発足時に、新しい役員がなられ、円滑に役員体制が継続できるよう工夫するということでしょう。
- 一部に支障が出る心配もわかりますが、むしろ多くの会員が関わり、経験することが、長い目で見て学会の力量の底上げと活性化に良い影響を与えるだろうと思います。
- いい意味で、仕事は皆さんで分担していきましょう。「しんどい人」には、誰かがサポートできる学会であってほしい。
- 役員は実質上かなりの権限なので、ボスが生まれないように交代制にするのがよい。しかし移行期から1/2ずつ交替する措置をとるようにする。
- 一部の方に負担が集中することは申し訳ないこと、および多くの会員が運営に参加することによって会員全体のモラールの向上につながる?ことが、おもな理由です。
- 学会の運営に多くの会員が参与することが望ましい。ただし、選出に当たっては、2期4年のサイクルで、役員構成が偏在しないように、適当に分散しないとはじめの選挙と次の選挙で人が固まってしまうことがあるので注意することが必要。
- 学会の様子、事情がわからないので判断しがたいのですが、原則的には賛成です。ただし、人数規模が比較的に小さいこと、会員の地域的な配置状況、に配慮すべきかとも思います。体制を実質的に担う人、はやはり限定されているのだろうと推察されますので、そのことに留意すればよいのだろうと思います。中小規模の学会というのは、議論がわかりやすい、friendly,familiarであること等の長所がある一方で、「なれ合い」に流れやすい、特定のボスによる支配傾向が見られがちであるというような問題を伴うこともあります。労働社会学会ではそのようなことはないかと思いますが、運営体制の内容をよくする上で、絶えず注意、点検すべきことかと思います。
- 疲れてマンネリ化する。
- 役員の任期を2期4年以内を限度とする提案は、役員が固定化することによる弊害を避ける意味で賛成します。理想的には第1期終了時に、現役員の約半数が新規になることがよいと考えます。
- 上述してある民主的な考え方には筋が通っていると思います。その上に限られた人の指導に依存し続けることは学会の停滞を垂らすとともに学会の弱体化か非流動的状態を表すものではないかと思います。
- 公平を期すため。
- 上述に記されているメリットが理由です。
- メリット、デメリットはいろいろあると思いますが、学会運営を一部の方が続けていくのは、負担が大きいと思いますし、多様なメンバーが、運営に関わることにより当事者意識も増すと思うので。半分ぐらいの人が交替すれば、連続性も得られると思います。
- 奉仕的な仕事なので、多くの会員が交替しながら分担するのが望ましいから。
- 原則的には連続2期で空白期間をもうけることには賛成。ただし、実際問題、幹事の場合、ローテーションできるほどの対応者がいるのかどうか。この問題がクリアできるようでしたら、注文なしに賛成です。
- 反対
- 人材不足、2期4年を超えて幹事になるか否かは選挙を通して各候補者に対して会員が判断できる。選出幹事を選ぶときは、幹事会内で検討できる。原則を作ると機械的に適用しがちで融通性に欠ける。
- その他
- 事情、問題がよくわからないので、集合的決定に従います。
- 複雑になりますが、半数改選などの方法を採り入れたらどうだろうか。確か、現在のところ、同時期が多いので、全部一度に変わることにならないだろうか。実際は運営の実質でやりくりしたとしても、ルール化はされていない。また、代表幹事の役割はよく知らないが、幹事の中でも差別化や例外を設けてみてはどうか。
- どちらがよいのか判断が付きかねます。
- 2期4年以内で1期空ければ再選されても良いが、通算で3期あるいは4期(8年)を限度とするように歯止めも必要。
先の幹事会では、このアンケート結果を受けて、幹事の2期4年任期制を次の総会で提案することを確認しました。
VI. 日本労働社会学会第3回幹事会議事録
(出席者)鎌田哲宏、秋元樹、岩本純、鎌田とし子、河西宏祐、京谷栄二、坂幸夫、田中直樹、藤田栄史、湯本誠、吉田誠、鷲谷徹、藤井史朗、小谷幸・山下充(オブザーバー)
- 1998年5月9日(土)11:00より14:00まで、日本大学会館において、第3回幹事会が開かれた。出席者は上記のとおり。
- 議題は以下のとおりで次のことが承認または報告された。
(議題)
- 第10回大会について
- シンポジウム
京谷研究活動委員長より、今年度大会シンポジウムテーマについて、「国境を越える労働社会」といったテーマで、日本のこの間の企業経営・労働組合・労働法制等の変化がアジアの労働にどのような影響を与えるか、あるいは北米に進出した日本企業の日本的経営・管理が現地労働者にどのような影響を与えるか、など、「国境を越える」ことを捉える枠組みと視点に焦点を当てたらどうか、との提起があった。また、その際のシンポジストの構想についても案が示された。
質疑では、シンポジウムの持ち方として、学会を軸とした研究者を中心とすべきではないかとの意見が出された。
シンポジウムテーマとしては、上記提案で承認され、京谷研究活動委員長より、シンポジストとして良い候補者がいたら、5月中に連絡して欲しいとの要望が出された。また今後の方向について、大会時に、会員の要望を聞きたいとの意向が出された。
また、プレシンポジウムは、10月3日に日本大学会館にて、実施する旨再確認された。
- 一般研究報告
京谷研究活動委員長より、一般研究報告の申し込みを7月末まで(報告題名のみ。レジュメなどは9月)、委員長まで申し込んで欲しい旨報告された。特に今年度は、時間的余裕があるので、多くの参加者を募りたいとの意向が述べられた。
- 工場見学
鎌田代表幹事より、近いうちに希望を募る旨報告された。
- 役員の任期制についてのアンケート
鎌田代表幹事より、学会役員に2期4年の任期を設ける案について、26名の回答者中賛成22名、反対1名、その他3名である旨報告された(5/8現在)。
質疑の後、今期の総会で、2期4年任期制設定の提案をする方向が確認された。
- 会員異動
鎌田代表幹事より、入会希望者3名が報告され、了承された。
また退会者1名が事務局より報告された。
- 幹事会・研究会日程
次回幹事会・研究会を7月11日(土)に開催すること、また、次回研究会は、スコット・ノース氏に「日本の労働時間問題と家族」という題名で依頼する旨報告された。
- 次期役員について
鎌田代表幹事より次期役員についてどうするかとの打診があり、報告事項として議論することになった。
(報告)
- 年報編集委員会
田中編集委員長より、現在投稿論文が4本査読に回っていること、また書評が4本、研究ノート1本投稿されている旨報告された。
- 「労働社会学研究」編集委員会
河西編集委員長より、委員長を決めたこと、またオブザーバーとして山下氏・小谷氏に本幹事会に参加してもらった旨報告された。また、現在の投稿状況について、論文2名、研究ノート2名出されていることが報告された。
藤田委員より、カンパについて1口5000円にし、『年報』を一冊贈呈すること、また、2口以上の場合、「労働社会学研究」もしくは『年報』を5冊贈呈するとの案が出された。カンパは60口を目標にすることが提案された。
河西編集委員長より幹事には2口のカンパが要請された。
坂会計担当幹事より、見積もりを出して欲しい旨要請された。
- 会計
坂会計担当幹事より、現在会費収入が予算目標の85%であること、次の『通信』発送時に2回目の請求書を同封する旨報告された。会費未納者は72名いることが報告された。
- その他
鎌田とし子幹事より、今回の「戦後労働調査を語る」について、報告者にテープを郵送して、本人に執筆してもらう旨依頼することが提案された。
鎌田代表幹事より次期役員の決め方について打診された。
質疑の中で、規約では立候補となっているが、立候補者がない場合に、推薦者を確保しておく責任が幹事会にあるか否かをめぐって議論された。規約を確認しつつ、具体的手続きを次回まで考えるとの方向が確認された。
VII. 会員の移動について
- 新入会員
略
- 退会
略
※そのほかに、入会希望者が1名おります。7月の幹事会で承認される予定です。
第3回定例研究会のお知らせ
報告題名:「今の日本における父親の仕事と家庭の両立問題」
「最近の米国における労働研究ハイライト」
報告者:ノース・スコット氏(カリフォルニア大学バークレー校 大学院博士課程・現在富山大学客員研究員)
日 時:7月11日(土)14:00〜17:00
場 所:日本大学会館・本部、会議室(203室)地図参照
(JR、地下鉄「市ヶ谷」駅下車 徒歩5分)
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※定例により、研究会の前に第4回幹事会を開きます。幹事の方は下記の通りお集まり下さい。
日時:7月11日(土)11:00〜14:00
会場:上記、日本大学会館・本部、会議室(203号室)