日本労働社会学会『通信』

vol.XIII, no. 6(2002年7月)

日本労働社会学会事務局

一橋大学社会学研究科    林大樹
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学会通信2002年第6号をお送りします。
   事務局では現在、164名の会員のアドレスを把握しており、これらの会員宛に本通信をメール送信しております。何か不都合がありましたら、事務局までご連絡下さい。
『通信』郵送希望会員への『通信』第5号の郵送は、本号と合わせ、近く行います。事務局の作業が遅れ、申し訳ありませんでした。


I. 5月定例研究会報告(パート2)

5月18日開催の定例研究会では2本の報告が行われました。うち1本についての感 想はすでに『通信』第5号に掲載しました。本号ではもう1本の報告への感想を掲載 します。

武居秀樹氏報告『美濃部都政崩壊期における都労連内部の路線と分裂』について

白井 邦彦(青山学院大学)

 武居報告は今日の自治体労働組合運動後退の原因を探ることを目的に美濃部都政崩 壊期の労働組合運動にスポットをあてたものである。特に美濃部都政の歴史をふりか えりつつ、その後の自治体労働運動の転換を分析するという観点から美濃部都政末期 の「自治体労働者」をめぐる日本共産党と自治労との論争をとりあげた点が特徴的で あった。同論争に対する武居氏の総括としては「『全体の奉仕者』論(共産党の)は 自治体労働者論における労働者性を希薄化させるもの、他方における『共同作業』論 も実は『機械的労働者』論(共産党による自治労への批判)ではなく、市民原理に基 づく労働条件規制や行革容認に道を開くものだったのではないか」(注:武居氏報告 レジュメからの引用)というものであった。そして武居氏は結論として「(共産党対 自治労の)論争における自治労の主張は、美濃部都政崩壊期における都労連主流の主 張や実際の行動に基本的に貫徹していたと考えられる。しかし革新自治体の崩壊、 1980年代にはいっての第二次臨調の発足を受けて、自治体労働組合運動を『反行革』 から『国民のための行革』へと転換した。これは共同作業論の中に胚胎していた問 題、すなわち階級原理と市民原理の矛盾を市民原理の中に溶解させていったのではな いか」と指摘された。
 こうした武居報告をめぐっては活発な議論が展開された。まず「自治体労働運動後 退」という場合「後退」とはなにか、をめぐって議論が展開された。武居氏によれば 「臨調行革」に対する態度がひとつの基準、すなわち「『臨調行革』に対する反対を 貫く=前進、『臨調行革』に賛成=後退」ということであるが、労働組合運動の「前 進」「後退」という場合もっと多面的な視点からとらえるべきではないかと感じた (例えば、「知的熟練」論をベースにすえた小池理論によれば今日の日本の労働組合 は国際的にかなり高い発言力を有し、それゆえ国際的にみてかなり先進的ということ になる)。又、フロア―より、「労働運動は『労働者の権利』一本で押していってい いものか」との問題提起が、「ヤミ手当問題」「高額退職金問題」「最近における郵 政労働者の生き残りのための労働強化問題」を例にしつつ、指摘された。この論点を めぐっては「公共性」と「労働者の権利性」をどう統一させるかという重要な問題と して活発な議論がなされた(結論はでなかったが)。
 非常に大きな問題の故、時間内ではとても結論のでるものでなかったが、今日的に も重要な問題を武居氏は提起された報告であり、有意義な討論がなされた研究会で あった。ただ参加者が少なかったことは唯一残念なことであった。

II.秋の大会における自由論題報告の申込みについて

(申し込み締め切りが近づいております。下記の案内を再掲します。)  秋の大会で自由論題報告を希望される方にお知らせいたします。報告ご希望の方はそのご意向を研究活動委員会までお知らせください。
申し込み先は、
一橋大学社会学研究科 渡辺雅男研究室
日本労働社会学会研究活動委員会
申し込み締め切りは、7月20日(土)(必着)
なお、報告要旨は、9月7日(土)までに、締切厳守で開催校(宇都宮大学・北島大会幹事)にお送りいただきます。

III. 幹事会および7月定例研究会のご案内

日時:7月27日(土)午後0時30分から幹事会。午後2時から定例研究会
場所:高田牧舎(早稲田大学南門向かいのレストラン)2階

第1報告 「高度技能形成と労働者の階層性−自動車産業A社の事例」
      恒川真澄氏(東京女子大学大学院文学研究科社会学専攻)

第2報告については、秋の大会のプレ・シンポの意味合いを持たせ、久場嬉子氏(東 京学芸大学)の論文「ジェンダーと『経済学批判』−フェミニスト経済学の展開と革 新−」(竹中・久場監修『現代の経済・社会とジェンダー、第1巻 経済学とジェン ダー』、明石書店、2002年、第1章)をめぐり、自由な議論を交わす予定です。 テキストは渡辺雅男研究活動委員長が用意しますので、参加希望者は事前にメール で、お問い合わせ下さい。
多数の会員の皆様の参加をお待ちします。