日本労働社会学会『通信』

vol.XIII, no. 2(2002年2月)

日本労働社会学会事務局

一橋大学社会学研究科    林大樹
(学会ホームページ)http://www.jals.jp
(郵便振り込み口座番号)00150-1-85076
(銀行口座)あさひ銀行横須賀支店 普通 1907291
「日本労働社会学会 大黒聰」
* ご注意! 銀行口座は2001年10月22日より変更しております。

 学会通信2002年第2号をお送りします。
前回お送りした「第6号」は「2002年第1号」に号数を変更します。 本号の目次は下記の通りです。
 郵送希望の会員には、少々遅れますが、第1号と第2号を合併してお送りします。
 事務局でメールアドレスを把握した141名の会員についてはメーリングリストを 作成しました。本通信もメーリングリストにて送信いたしますが、何か不都合があり ましたら、事務局までご連絡下さい。


『通信』第2号目次

I. 第8回幹事会報告

II. 第1回(2002年度)幹事会報告

III. 12月(2001年)定例研究会報告

IV. 『労働社会学研究』(学会ジャーナル)第4号の投稿募集について

V. 各種連絡(『通信』第6号の再掲)

VI. 生産・労働・組織研究会からのお知らせ

VII. 幹事会および3月定例研究会のご案内

VIII. 事務局便


I. 第8回幹事会報告

 11月3日(土)正午より、午後1時30分まで、早稲田大学所沢キャンパス201教室にて、第8回幹事会が開かれた。出席者は13名(大黒聰、河西宏祐、北島滋、鈴木良始、鈴木玲、清山玲、土田俊幸、中囿桐代、林大樹、兵頭淳史、松戸武彦、吉田誠、渡辺雅男)であった。

  1. 委員会関係
    第13回大会総会次第(案)および同総会資料(案)にもとづき、代表幹事および各委員会からの報告の内容を確認した。
    『労働社会学研究』(ジャーナル)編集委員会(土田俊幸委員長)から、第4号の投稿申し込みが少数であったことが報告された。締め切りの延期について協議した結果、刊行スケジュールを半年遅らせることにした。(第4号の投稿募集については、『通信』第5号及び本号をご覧下さい。)
     次回(第14回)大会の開催校について、会員の協力をお願いしていたところ、宇都宮大学から担当してもよいとの申し出があり、引き受けていただくこととした。

  2. 事務局関係 入会の承認―鈴木誠(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会)、白井邦彦(釧路公立大学)、竹田昌次(中京大学)の3名の入会が承認された。

II. 第1回(2002年度)幹事会報告

12月15日(土)午後0時30分より2時まで、早稲田大学戸山キャンパス34号館第3会議室にて、2002年度第1回幹事会が開催された。出席者は10名(市原博、大黒聰、河西宏祐、鈴木玲、土田俊幸、中村眞人、林大樹、兵頭淳史、吉田誠、渡辺雅男)であった。
 議題は以下の通り。

  1. 第13回大会関係
     大会収支等の報告。

  2. 年報編集委員会
     次号の編集方針についての協議。

  3. 「労働社会学研究」編集委員会
     次号における研究例会報告の掲載についての協議。

  4. 研究活動委員会
     定例研究会の発表者の募集と積極的な情報提供の期待について。東京以外での自主的な研究会の開催を歓迎することについて。シンポジウムの企画案を広く募集することについて。(2002年大会のシンポジウム案の公募については、本号及び前号の各種連絡を参照されたい。)

  5. 会計
     2002年度予算に対する12月14日現在の実績の報告。資産形態の報告。郵便定額貯金の満期に伴う会計処理の報告。ジャーナル・カンパ・リストの報告。年報基金の報告。年報・ジャーナル販売状況の報告。

  6. 事務局関係
    (1) 退会者―壷倉菜穂子、萩原康子、齋藤美雄。以上3名。
    (2) 入会者―大久保マリ子(神戸大学大学院文化学研究科博士課程)、新田明(神戸大学大学院文化学研究科博士後期課程)。以上2名。

  7. 次期大会日程
     大会担当の宇都宮大学・北島副代表幹事から出された日程案につき協議し、11月1日(金)工場見学、11月2日(土)発表、懇親会、11月3日(日)シンポの案を中心に検討を進めることとした。

  8. その他
    (1) 本学会の一会員から匿名で7万円の寄付があったことが代表幹事より報告された。この寄付金は、学会会計とは別個の「基金」として預かり、用途については、時間をかけて検討することとした。
    (2)北島滋副代表幹事から、学内行政上の責務が重くなったため、幹事会の役割分担については、年報編集委員会を外れて、大会担当幹事に専念したいとの意向が示された。これに対し、年報編集委員会は、北島幹事が抜けるのは致し方ないが、陣容が手薄になるため、編集委員の補充をお願いしたいとの要望が出された。また、「職人芸の伝承」の北海道版も企画したいが、これを担当する編集委員の必要も提起された。これらの課題については、次回幹事会で協議することとした。
    (3) 2002年度の幹事会日程を以下の通り決定した。いずれも土曜日。
     第1回 3月16日
     第2回 5月18日
     第3回 7月27日
     第4回 9月28日
     第5回 11月大会当日

III. 12月(2001年)定例研究会報告

1. 小川慎一氏報告
「日本企業における小集団活動の制度化―計画と実行の非分離と 簡便法のパッケージ化」の感想                         

鈴木玲(大原社会問題研究所)

 小川氏はこの発表で、日本企業での小集団活動の制度化とそれ以降の変容について歴史的に検証した。発表で重要な論点は次の2点である:(1)小集団活動の重要な促進要因は、エンジニアの品質管理知識が「簡便法のパッケージ化」により一般作業者に広まったこと、(2)小集団活動は、導入当初の作業者による自主的活動から、管理職の指導による改善活動に変容し、さらには作業者による問題解決は通常業務に組みこまれるようになったことである。これらの論点を、日科技連の品質管理教育プログラムと東芝府中・柳町工場の品質管理活動を事例に、歴史的(1950年代〜90年代)に検証した。
 日科技連は、品質管理教育の対象を技術者→監督者→一般作業者に広げ、60年代後半からQCサークルの教育として「QC7つ道具」などの簡便法のパッケージ化を提示した。それまでカンやコツに頼って、なかなかエンジニアの言うことを聞かなかった現場作業作業者が、「小学生でもわかるような」簡便法手法を通して品質管理手法を次第に受け入れていった。
 東芝府中の小集団活動は、70年代は「自発的」で職場の身近な問題を解決したが、扱う問題の技術レベルは低かった。80年以降は、管理職の小集団活動への管理が強まり、扱う問題は経営方針に沿った生産に直接関わるテーマに範囲が狭まった。一般作業者の品質管理手法の理解は簡便化により深まり、エンジニアと作業者の社会的統合が進んだ。さらに、東芝柳町工場では90年代に入ると、小集団が行ってきた改善活動が通常業務に組み込まれたため、小集団活動自体の意義が薄れ始めた。
 このように、小川氏はこれまで静態的に分析される傾向にあった小集団活動について、導入の契機や内容の変化を詳細に分析し、小集団活動の動態的側面を明らかにした。参加者からは、簡便法が作業者に受け入れられた理由をエンジニアと作業者の社会的関係の文脈から説明してほしい、小集団活動の導入・広がりの説明で簡便化以外の要因を軽視していないかなどのコメントが出された。

2.  前島賢土氏報告
「職務犯罪研究の紹介−証券会社社員の職務犯罪の研究より−」 の感想                        

兵頭淳史(専修大学経済学部)

 第二報告は、前島賢土氏による職務犯罪に関する研究報告である。職務犯罪とはホワイトカラー犯罪の下位概念であり、これまでの研究によれば、ホワイトカラー犯罪は、企業などの合法的な組織の利益を目的として意図される「組織体犯罪」と、専ら個人的な利益を目的として職業上犯される「職務犯罪」とに分類されることが多いという。前島氏の研究はその中でも個人によってなされる職務犯罪に焦点を当てたものである。
 本報告では、まず横領・窃盗・収賄など職務犯罪の主な種類ごとに研究動向のレビューがなされた上で、前島氏自身によって取り組まれた職務犯罪の事例研究として、ある証券会社従業員による業務上横領および詐欺事件をめぐる考察の成果が発表された。この事例研究は、職務犯罪に特有の、犯罪者による犯行の正当化がいかになされるか、および犯罪の機会がいかに形成されるかという点に着目したものであり、メディア報道・裁判記録・前島氏自身による聞き取り調査の分析という方法によって行われた。
 この考察を通じて明らかにされたことは、証券業界には「個人顧客の蔑視」「営業の重視」という、業界特有の「下位文化」が存在し、こうした業界下位文化の存在が、「ノルマの達成のため」なら犯罪を犯してもよいという犯行正当化の心理と、営業成績が優秀な従業員に対するずさんな管理という形での犯行の機会を提供した、ということである。
 本報告を受けての質疑においては、「営業の重視」といった下位文化の存在が犯行を促進しているのであれば、それは企業ぐるみの犯罪との見分けをつけるのは困難であり、一部の先行研究の指摘通り、職務犯罪と組織体犯罪とを画然と分かつべきではないということになるのではないか、といった疑問が提示されるなど、活発な議論が展開された。いずれにせよ、ホワイトカラー犯罪という、しばしば世間の耳目をひきながらも、わが国の労働研究の分野においてはこれまで着目されることの少なかった現象に光を当てた本報告は、われわれに大いに知的刺激を与えるものであった。前島氏の研究のさらなる展開が注目されるところである。                         

IV. 『労働社会学研究』(学会ジャーナル)第4号の投稿募集について

----学会ジャーナル編集委員会からのお知らせ----

『労働社会学研究』第4号の刊行スケジュールと投稿申し込みについて、『通信』5号(2001年11月)でお知らせしたように下記のように変更しました。
ふるってご応募下さい。

投稿申し込み締め切り・・・・・・・・・・2002年4月末日
原稿締切・・・・・・・・・・・・・・・・2002年6月末日
発行予定・・・・・・・・・・・・・・・・2003年1月

※投稿申し込みは、土田俊幸編集委員長宛に郵送またはFAX、メールで申し込み下さい(下記の宛先をご参照下さい)。
また投稿規程については、『労働社会学研究』掲載の規程を参照して下さい。

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土田俊幸 (TSUCHIDA, Toshiyuki )
長野大学産業社会学部 ******************************************

V. 各種連絡(『通信』第6号の再掲です。)

【おしらせ】

昨年の労働社会学会第13会大会において、鎌田とし子・鎌田哲宏両会員が広田義治氏『1954年日鋼室蘭闘争の記録 日鋼労働者と主婦の青春』(光陽出版社、2001年)の推薦文を配布しました。そこに記載されていた広田氏の連絡先に間違いがありましたので、以下のように訂正させていただきます。
正しい連絡先は略です。
なお第13回大会を欠席された方で、この広田氏による文献に関心をお持ちの方は 中村広伸までご連絡ください。

【2002年大会のシンポジウム案の公募】

 2002年11月、宇都宮大学で開催予定の第14回大会のシンポジウムのテーマ を募集しています。
テーマ案をお持ちの会員は、渡辺雅男研究活動委員長までお知らせくださいますよう、お願いします。

【日本労働社会学会年報第13号の原稿募集】

以下の要領により、年報第13号の原稿を募集します。

  1. 募集する原稿は、論文・研究ノート・書評・海外動向等とします。
  2. 投稿予定のある方は、下記の連絡先までハガキで投稿予告をしてください。予告のハガキには、氏名、所属、連絡先(住所・電話番号・電子メールアドレス)、原稿の分野(論文・研究ノート・書評・海外動向の別)、仮題名、予定枚数、書評の場合は対象とする書物のデータ(編集者名・書名・発行所・刊行年・定価)を明記してください。投稿予告締め切り(厳守)は、論文および研究ノートが2002年2月28日、書評・海外動向は2002年4月30日です。
  3. 投稿締め切りは論文・研究ノートが4月10日、書評・海外動向は5月31日です。原稿は下記の連絡先まで郵送して下さい。
  4. 著書を書評で取り上げることをご希望の場合は、下記の連絡先までお早めにご一報下さい。
  5. 編集規定、年報投稿規定については、年報12号の巻末をご覧下さい。執筆要項は下記の通りです。

編集委員会連絡先:

編集委員長 山田 信行 宛

 

日本労働社会学会年報執筆要項

  1. 原則として、400字詰原稿用紙60枚以内(図表等を含む)とする。ワープロによる執筆の場合は24000字以内とし、図表等は一枚あたり400字と換算する。
  2. 研究ノート、書評、海外動向等は、原則として400字詰原稿用紙20枚以内(図表等を含む)とする。ワープロによる執筆の場合は8000字以内とし、図表等は一枚あたり400字と換算する。
  3. 論文については、日本語以外による、題名と300語以内の要約を添付する。
  4. 引用文献の記述は次の形式による。
    1. 本文には引用する著書・論文の著者名と発行年、必要な場合には引用頁を次の形式で記載する。同一著者、同一出版年の文献を複数引用する場合は、出版年の右肩にa、b、c ・・・を付す。この記号は、本文中で主語等として用いることができる。
      著者名 [出版年:該当頁]    例)労働一郎 [1995a:100]
    2. 著書の場合には、著者名、出版年、書名、出版社を記載する。日本語の書名は『』で囲み、欧文の場合はコンマで区切る。
      例)労働一郎, 1995『労働社会学概説』, 労社書店.
        Marx, K., 1867, Das Kapital, Dietz.
    3. 論文の場合には、著者名、出版年、題目、雑誌等名(または掲載書名、掲載書の記載の仕方はii.に準ずる)、巻号を記載する。日本語の論文名は「」で囲み、欧文の場合はコンマで区切る。
      例)労働一郎, 1995, 「労働社会学の展望」『労働社会学会年報』第10巻.
        労働一郎, 1995a, 「労働社会学の課題」労働二郎編『労働社会学入門』労社書店.
  5. 図表等は別紙に記載し、論文中に挿入すべき箇所を指定する。
  6. 可能な限り、論文ファイルの記録されたフロッピーディスクを添付する。フロッピーディスクの形式は、国内で一般的に使われているものならば何でも良い。

VI. 生産・労働・組織研究会からのお知らせ

【研究会の案内】

20世紀生産システムへのオルターナティブ
―労働の人間化と生産効率の二律背反を超えて―

 2月下旬から3月中旬にかけて、ボルボ・ウッデバラ工場の生産システムの確立に深く関わったスウェ−デンの研究者が来日します。この機会に、下記の要領で研究会(20世紀生産システムへのオルターナティブ:労働の人間化と生産効率の二律背反を超えて)を開催いたします。
 日本では、ウッデバラ工場の生産システムの特徴(レイアウトや作業チームの編成等)は、すでに広く知られているといってよいでしょう。しかし、どのようにして2時間以上にもおよぶ長いサイクル・タイムの組立作業を効率的に行うことができるのかという、いわばソフト面での立ち入った分析と紹介は十分になされてこなかったように思われます。今回来日する研究者達は、長いサイクル・タイムの作業で自動車を効率的に組み立てるには、短いサイクル・タイムの作業の場合とは異なる新しい情報設計や学習戦略を開発・採用することが決定的に重要であると主張しています。
 日本でも1990年代に入り、伝統的なベルト・コンベアを撤去して比較的少人数の作業者で製品を組み立てる方式が広がりつつあります。スウェ−デンの研究者達が提起する製品に関する情報設計の組み替えとそれにもとづく組立作業の再編成や新しい学習戦略による作業者訓練は、日本の組立産業における作業の改善にとっても原理的に問題を再考するうえで有益な手がかりを提供していると思われます。多くの方のご参加をお待ちしています。

日時:2002年3月3日(日)、10時〜17時
場所:中京大学・八事学舎・会議棟・中会議室
  (名古屋市昭和区八事本町101-2、地下鉄八事駅下車)

報告者:

  1. トーマス・エングストローム/ラルス・メドボTomas Engstrom/ Lars Medbo(チャルマーズ工科大学物流学部)「製品情報の組み替えと変換による組立作業の再編成」Assembly Work Structuring Based on Restructuring and Transformation of Product Information
  2. レナルト・ニルソンLennart Nilsson(ヨーテボリ大学教育学部)「組立作業のオルターナティブとその学習戦略」Alternative for Assembly Work and Learning Strategies in order to Support Competence for a New Work Situation
  3. カール・ヴェンストロームCarl Wanstrom(チャルマーズ工科大学物流学部)「サプライ・チェーンと資材の計画・管理」Material Planning and Control in a Supply Chain Perspective

*参考文献(最近の翻訳文献)

*報告と議論は主に英語で行われ、それぞれ45分+45分の計90分で予定しています。

主催:生産・労働・組織研究会(浅生卯一、猿田正機、野原光、藤田栄史)

*どなたでも参加できます。準備の都合上、参加を希望される方は、下記までお知ら せください。

【連絡・問い合わせ先】
中京大学経営学部 猿田正機
  勤務先:略

VII. 幹事会および3月定例研究会のご案内

日時:3月16日午後0時30分から幹事会。午後2時から定例研究会
場所:早稲田大学本部キャンパス・14号館510教室

定例研究会報告者と報告タイトル

第1報告:
渡辺めぐみ(お茶の水女子大学大学院生)
「家族農業経営におけるジェンダー分析の試み−専業農家女性へのインタビューから −」

第2報告:
松尾孝一(青山学院大学経済学部)
「地方自治体職員のキャリア管理と労働組合の対応」

VIII.事務局便り

昨年11月3〜4日の大会の際、大会出席者に配布した本学会の会員名簿から、林彌富会員のお名前が抜けておりました。これは名簿作成に当たった事務局のミスです。ご迷惑をおかけしたことを同会員はじめ会員各位にお詫びします。
なお、林彌富会員の所属は大阪樟蔭女子大学人間科学部応用社会学科、メール・アドレスは、略です。