日本労働社会学会『通信』vol.XI, no.4(2000年9月) 日本労働社会学会事務局群馬大学医学部 (学会ホームページ)http://www.jals.jp (郵便振り込み口座番号)00150-1-85076 |
厳しい暑さもようやく通り過ぎ、秋風が心地よいこの頃になりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、前号の遅れをお詫びしたばかりでしたが、またまた事務局担当者(藤井)の暑さぼけから次回定例研究会の直前の『通信』発送になってしまいました。お詫びの 言葉もありません。どうかこぞって研究会にご参加下さい。ホームページアドレスが上記(http://labornet.yokohama-cu.ac.jp/jals/)のように変更されました。ご注意下さい。
なお、長野大学にて開催の第12回大会が近づいております。よろしくご参加のほどお願いいたします。
豊泉周治氏「企業社会と内的植民地化の病理―ハーバーマスと現代日本社会―」
7月22日に、早稲田大学人間総合研究センター別室にて、群馬大学の豊泉周治氏による研究報告(「企業社会と内的植民地化の病理―ハーバーマスと現代日本社会―)が行われました。
豊泉氏の報告は、現代日本の企業社会に対する基本課題・基本視点について、ハーバーマスの社会理論の検討から考察し、問題提起しようとするものでした。はじめに豊泉氏は、ハーバーマスの基本視点との関わりで現代日本を捉える次の点を指摘しました。(1)ハーバーマスの理論が「近代のプロジェクト」をポストモダンのように放棄せずに、批判的に継承する道筋を探ろうとするものであること。(2)労働政治と福祉国家とが限界にいたっていること。(3)「生活世界の植民地化」をめぐる問題の解決がキーになっていること。(4)従来の「社会主義」は、「ラディカル・デモクラシー」の点から位置づけ直されねばならないこと、です。
次に日本の「企業社会」との関わりで、(1)90年代における新自由主義への一元化傾向、(2)日本型福祉による「危機の転移」、(3)生活世界の内的植民地化と若者・児童のアイデンティティ危機、(4)消費文化と公共性の喪失、などの諸点が指摘されました。
質疑では、「システムと生活世界」というハーバーマスの基本視点をめぐり、「ゲマインシャフトとゲゼルシャフト」という伝統的な2分法との異同などの点から、生活世界概念が深められました。また豊泉氏は、実存主義や構造主義とハーバーマスの理論的立場の違いについて触れ、前2者が一つの主体を想定しているのに対し、ハーバーマスのコミュニケーション理論は多元的な主体間の言葉による了解関係を重視しているという点を指摘しました。
労働社会学の分析領域について、原論の次元から再考してみることのおもしろさを感じた報告でした。
(事務局)
下記のとおり、第5回定例研究会を開催いたします。連絡が遅れまことにすみませんが、よろしくご参加下さい。
日 時:9月30日(土)15時〜17時半
場 所:早稲田大学人間総合研究センター別室(裏面地図参照)
報告者:佐久間敦子(九州大学比較社会文化研究科博士後期課程)
報告タイトル:「契約社員の雇用に関する一考察〜繊維業A社の事例研究を中心に〜」
一般研究報告の希望者とタイトルは以下の通りです。
なお、上記の自由報告予定者は、9月末までに報告タイトルならびに報告要旨を提出願います。報告要旨は、ワープロでA4大(1枚分の分量は40字×50行以内)2枚の分量にまとめ、メールで送ったうえで同時にプリントアウトした用紙を郵送するか、あるいは、プリントアウトした用紙とフロッピーディスク(1.44MB、テキストファイル形式)を郵送して下さい。報告要旨の送り先は、開催校長野大学産業社会学部の土田俊幸宛てにお願いします。
土田俊幸
略
長野大学を会場に開催される第12回大会のシンポジウムの内容は、テーマを「ゆらぎの中の日本型経営・労使関係」(仮題)とし、次のような形で3名の方に報告者を引き受けていただきました。報告者は、林大樹会員(一橋大学)、木下武男先生(鹿児島国際大学)、仲野組子会員(同志社大学非常勤講師)です。
日本型経営・雇用慣行をめぐる変化は、ここ数年、極めて激しいものがあります。一連の労働法制の「改正」が展開し、1995年の日経連「新時代の『日本的経営』」に象徴的に示された段階とは異なる質を持った、新しい動きが出てきているとさえ思われます。経済同友会が1997年初頭に発表した「市場主義宣言」にみられるような新自由主義的主張が経営者団体の一部から鮮明に打ち出され、「市場主義」が経営・雇用慣行に大きな影響を与えてきているのみならず、「能力主義」という用語は「時代遅れ」のものとなり、「成果主義」が管理者のみならず一般従業員を対象とした人事・雇用管理の中にも入り込んできています。しかし、こうした変化が見られると同時に、持続の側面も見逃すことはできません。「市場主義」を華々しく宣言したかにみえた経済同友会も、1999年の新しい代表幹事就任挨拶では「『市場主義』を超えて」というタイトルを打ち出し、株主・市場と社会的ステークホールダーズとの「調和」を目指し、単純な「市場主義」を超えた新しい日本の企業経営へと揺り戻そうとしているかの言説を取り始めています。
九〇年代後半以来の大きな動きをどのように把握すべきなのか、三人の報告者のそれぞれの立場から論じ問題提起していただき、学会会員全体で議論を深めるきっかけに大会シンポジウムがなることを期待しています。
各報告者の担当分野をおおまかに言うならば、林会員には、経営者(団体)サイドの経営・雇用に関するイデオロギー・言説と政策提起に焦点を置いて分析していただき、木下先生には、「成果主義」への動きとこれに伴う賃金をめぐる競争構造の変化が持つ意味に重点をおいていただき、また、仲野会員には、アメリカの非正規雇用の実態を紹介しつつ、これと対照しながら、非正規雇用拡大が日本的雇用慣行をどのように組み替えつつあるのかについて、示唆を与えていただきたいと考えています。なお、コメンテーターの役割を中川順子会員(立命館大学)にお願いしていますが、中川会員には報告者3名全員に対するコメントを行うのではなく、今日の雇用労働と職場の変化を見るうえで欠かすことができない側面である女性労働と家族の構造変化に絞って、総括討論の口火を切る形で、論点提起的なコメントを依頼しております。
来る11月19日(日)に予定されている総会におきまして、次期選出幹事を選出いたします。選出幹事の数は10名(選任幹事は9名)です。
「日本労働社会学会役員選出に関する細則」(1997年度総会で制定承認、1998年10月1日より施行)の第3条には、「選出幹事の立候補者は、総会前に幹事会に届け出るものとする。2 立候補者は、自薦及び他薦とし、他薦の場合はあらかじめ本人の承諾を得るものとする。3 被選挙権は、選挙時までに会費を完納した会員が有するものとする」となっております。この立候補者に対する総会での投票(3名以内連記、上位10名当選)で選出されます。
この原則において次期総会で選出幹事を選出いたしますので、同封した「次期選出幹事『立候補者』(自薦・他薦)の届け出のお願い」にて、立候補者の届け出をお願いいたします。しかし、立候補者が総会までに定員に満たない場合も想定し、幹事会としても対応しておく必要があると考えております。そのため、第一次の届け出期間として、10月30日までに同封の用紙にてFAX、郵送等(e-mailも可)で事務局まで「立候補者」名(自薦・他薦、他薦の場合は本人の承諾を得て下さい)を届け出て下さい。その数を考慮して、幹事会の方でも総会までに立候補者が最小でも10名揃うように対処したいと思っております(ただし、10月30日に間に合わない場合でも、総会まで届け出の権利はあります)。
上記のことをご了承の上、事務局までお届け下さい。
2000年7月22日(土)13時〜14時に、早稲田大学人間総合研究センター別室にて第4回幹事会が開催されました。
出席者 田中、秋元、上原、大黒、河西、京谷、土田、藤田、山田、鷲谷、林、藤井
議題
A. 報告事項
〔審議事項〕
(プライバシー保護のため住所等はWEB版では省略させていただいてます)
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※定例により、研究会の前に第5回幹事会を開きます。幹事の方は下記の通りお集まり下さい。
日時:9月30日(土)15:00〜15:00
会場:早稲田大学人間総合研究センター別室(本部・高田牧舎2階)地図参照。