日本労働社会学会『通信』vol.XI, no.3(2000年6月) 日本労働社会学会事務局群馬大学医学部 |
本州は梅雨空のうっとうしい季節となりましたが、会員の皆様はますますご活躍のことと存じます。去る5月6日、7日には、「フィールド調査の技法について語る会」が18名の参 加で開かれ、活気ある報告・討議がなされました。この模様をお伝えいたします。なお、事務局担当者(藤井)の責任で『通信』第2号の発行が遅れ、参加できなかった 会員がおられたことにつきお詫びいたします。
また、5月20日には、第3回定例研究会がもたれ、小池隆生会員よりアメリカの 貧困問題と福祉改革についての報告がありました。この模様もお伝えいたします。今回、2000年度会費未納の方(およびそれ以前からの会費未納の方)に振り込み用紙を同封させていただきました。本学会は、現在財政状況改善に取り組んでおり、会員各位のご協力を得てかなり成果を挙げつつありますが、なお厳しい状況です。どうかよろしくお願いいたします。
5月6日(土)、7日(日)に、専修大学神田校舎において、田中直樹・北島滋・ 鎌田とし子・柴田弘捷・河西宏祐各先生の報告による「フィールド調査の手法につい て語る会」研究会がもたれました。当日は、若い院生会員ら18名が参加し、貴重な 報告をもとに熱気ある討論がなされました。この模様を報告いたします。
研究会の冒頭、秋元年報編集委員長より今回のプロジェクトの趣旨について説明が あった。調査に基づく研究を継続している研究者の調査技法について話していただき 、これを年報の特集にして後に続く者への参考にしてもらおうとのものである。
第1報告は田中直樹氏であり、戦後の炭鉱労働問題を諸機関や関係者からの周到な 史料収集を介して進めてきた経過が話された。質疑の中では、そのままでは紛失して しまう史料を膨大に集積してきた田中氏の研究の意義が再確認されるとともに、研究 を貫いたテーマのあり方や史料批判の方法などについての質問がなされた。
第2報告は、北島滋氏であり、労働組合調査から市民運動調査、地域調査へと展開 してきた経過、そして自らの生活経験を生かして感情移入をする「生活経験活用型調 査法」について述べられた。質疑では、労働運動などとの関わりの実際について、目 の付け所や交渉相手の選び方などについて深められた。
第3報告は、鎌田とし子氏であり、ご本人の長い調査研究経過に沿って、その時々 の調査設営・実行上の苦労や工夫、教訓などがリアルに語られた。特に容易には入っ ていけない現場の調査や不安定就労層への調査において、対象者が心を開いて教えて くれるプロセスの紹介は臨場感あふれるものであった。質疑では、「二重構造」の実 証という調査視点の確立経過や、最近の二重構造の崩れの予感などについて話された 。
第4報告は、柴田弘捷氏であり、いろいろな地域、産業、職業について、まずはと もかく見て回るという調査経験について語られた。またその中で特に、生産工程にお けるロボットから人間へと逆に向かう事象なども紹介された。質疑では、柴田氏の調 査法を質的な大量観察として、「見学調査法」としての意義が指摘された。
第5報告は、河西宏祐氏であり、歴史的研究を意図して「電産」に入って以降、「 少数派組合」に気づき、現場に密着して追ってきた調査研究経過が話された。また現 場でメモを取ることができないときのヒアリングの工夫や、学生たちの社会調査実習 としての教育の試みとその苦労などが語られた。質疑では特に、社会調査実習のやり かた、OBの人々の活用などについて掘り下げられた。
2日にわたる報告・質疑の後、参加者から感想や質問が述べられ、大変意義のある 機会であったことが口々に指摘された。最後に、次号の『年報』に各報告のエッセン スを載せることを確認し、会を終了した。
(事務局)
5月20日、あいにくの雨模様の天気の中、第3回定例研究会が13名の会員の出席をもっておこなわれた。この日の報告は、小池隆生氏により、「90年代アメリカにおける 貧困問題と対応策の断面−クリントン福祉改革法成立の文脈を中心に−」というテーマでなされた。
報告では、アメリカ社会における極貧生活者とくに人種マイノリテイや女性に対す る公的扶助のAFDC(要扶養児童家族扶助)を撤廃し、新しくTANF(窮迫家族に対する臨時扶助)包括補助金を設置して、一人が生涯において受給できる期間を5年とすること、しかもその受給と引き換えに強制的な就労を義務づけるという「96年福祉改革 法」成立の是非がテーマとされた。特に、これらの法律の適用を受ける福祉受給者で ある極貧生活者の現状やこのような人びとを今後どのように取り扱うべきかについて 論じられた。報告終了後、活発な質旋応答がおこなわれ、終始なごやかな雰囲気の中 で研究会は無事終了した。
(関東学院大学大学院 金子満活)
すでに会員各位のお手元に届いているかと思いますが、このたび「労働社会学研究 」第2号が発行されました。執筆者の皆様はもとより、ここに至るまでにご尽力いた だいた、河西編集長はじめ、編集委員の皆様、また査読などにご協力いただいた皆様 に感謝いたします。
さて、「労働社会学研究」第3号の投稿申し込みなどについてお知らせいたします。
学会大会の一般研究報告(自由報告)の申し込みを下記のように受け付けますので 、奮って応募下さい。申込期限は7月31日(月)です。報告題名を藤田研究活動担 当幹事宛に郵送あるいはFAX、メールでお申し込み下さい。
藤田栄史幹事(研究活動担当)連絡先
略
―ベンチャービジネスタウン・坂城町の見学(11月20日)―
長野大学での大会開催にあわせて、ベンチャービジネスタウンとして名高い坂城町の見学会を開きます。坂城町は高度成長期に起業ブームが起こり、人口1万7千人の町に300社を越える、機械部品、金属加工などの製造業の小企業が集積する地域です。小企業数社を見学した上で、企業経営者と町の職員を交えて、坂城テクノセンター(企業支援施設)で懇談会を開く予定です。坂城町は上田から車で30分ほどの所にあり、見学会は10時から15時を予定しています。
見学参加申込方法は、9月はじめ頃発行予定の次号会報でお知らせしますが、車や訪問先企業の手配などの都合上、大会出欠確認と同時に9月末頃締め切りで、見学参加申込を受け付ける予定です。
まだ未納の会員は、2000年度会費の納入をお願いいたします。該当の方には、封筒 に振り込み用紙を同封いたしましたのでよろしくお願いいたします。この間、会員各 位のご尽力を得てかなり財政状況を改善させてまいりました。しかしなお厳しい財政 状況であり、会費の滞納はただちに財政上の困難をもたらします。この点をぜひご理 解下さるようお願いします。
1999年度以前の会費を滞納されている方がおられます。この際ぜひ併せて納入をお 願いいたします(滞納分については、別紙「会費納入のお願い」に記載してあります )。全額が難しい場合は分割でも結構ですので、よろしくお願いします(分割につい ては、そのむね通信欄にお書き下さい)。
「日本労働社会学会年報」バックナンバー(3号以降)の在庫があります。この販 売は学会収入となりますので、ぜひご協力をお願いします。お申し込みは下記会計幹 事まで(直接書店に申し込みますと学会収入にはなりませんので、よろしく)。
研究担当幹事 京谷栄二
2001年3月26日ー28日にロンドンで開催される第19回国際労働過程会議の報告者を募集する案内が、開催校のクリス・スミス教授から寄せられました。この大会の主要なテーマは Labour Process Theory, Internationalisation of the Workplace, Creative Labour, Labour Process and Labour Market Dynamics, New Managerial Strategies です。これらに限らずこの学会では、ジェンダーと労働、ニュー・テクノロジー、職場の民主主義など労働生活にかんする諸問題が幅広く議論されてきています。報告を希望する会員は報告要旨(750ー1000字)を10月30日までに下記のクリス・スミス教授宛に送付してください。報告希望受諾の決定はレフェリーによる審査を経て11月末に本人に通知されます。なお大会報告時にはフル・ペーパー(完成稿)の提出が求められます。詳細については京谷までお問い合わせください。
2000年3 5月20日 (土)13:00〜14:15 早稲田大学人間総合研究センター別室 (高田 牧舎2階)にて、第 3回幹事会が開催された。
出席者は、田中直樹、大黒聰、河西宏祐、北島滋、京谷栄二、土田俊幸、藤田栄史 、山田信行、鷲谷徹、吉田誠、藤井史朗、以上11名。
議題
〔報告事項〕
〔審議事項〕
(プライバシー保護のため住所等はWEB版では省略させていただいてます)
|
※定例により、研究会の前に第4回幹事会を開きます。幹事の方は下記の通りお集まり下さい。
日時:7月22日(土)15:00〜15:00
会場:早稲田大学人間総合研究センター別室(本部・高田牧舎2階)地図参照。